GPT-5.6 Sol・Terra・LunaとReasoningの使い分け
OpenAI Codexを日常的な開発に使っていると、気になってくるのが**利用上限(Usage Limit)**です。
Codexの /status を確認すると、例えば次のような表示があります。
Model: gpt-5.6-sol
(reasoning low, summaries auto)
Weekly limit: 10% left
これは単純に「あと10回使える」「残り10万トークン」という意味ではありません。
Codexでは、使用するモデル、Reasoningの強さ、処理するコード量、コンテキストの大きさなどによって消費量が変わります。
そこで、普段の開発でCodexを効率よく利用するために、GPT-5.6のモデルと設定について整理してみました。
OpenAIのagentic usageの確認
Codex と Work のアナリティクス
https://chatgpt.com/codex/cloud/settings/analytics?utm_source=chatgpt.com#usage
GPT-5.6にはSol・Terra・Lunaがある
GPT-5.6には用途の異なる3つの主要モデルがあります。
| モデル | 位置付け | 向いている用途 |
|---|---|---|
| GPT-5.6 Sol | 最高性能 | 複雑な問題、難しい設計・デバッグ |
| GPT-5.6 Terra | 性能とコストのバランス | 通常の開発・実装 |
| GPT-5.6 Luna | 低コスト・大量処理 | 定型処理、大量の単純作業 |
OpenAIも、Solを複雑な推論・コーディング向け、Terraを知能とコストのバランス型、Lunaをコスト重視・大量処理向けとして位置付けています。
したがって、
一番性能が高いSolを常に使う
ことが、必ずしも効率的とは限りません。
モデルによってコストは大きく違う
API料金を比較すると、モデル間の差が非常に分かりやすくなります。
2026年8月時点の100万トークン当たりの料金は次のとおりです。
| モデル | Input | Cached Input | Output |
|---|---|---|---|
| Sol | $5.00 | $0.50 | $30.00 |
| Terra | $2.00 | $0.20 | $12.00 |
| Luna | $0.20 | $0.02 | $1.20 |
つまり、同じトークン数なら、
Sol 100%
Terra 40%
Luna 4%
という関係です。
逆に考えれば、Solを1とすると、
Sol :1
Terra :約2.5倍
Luna :約25倍
程度の処理量を同じ理論コストでこなせる計算になります。
ただし、これはAPIのトークン料金から見た比較です。Codex PlusのWeekly limitが厳密にこの倍率で減ることを意味するわけではありません。
実際のCodex利用量は、タスクの複雑さやReasoning、ツール利用などでも変わります。
Reasoningとは何か
Codexの /status には、
gpt-5.6-terra
(reasoning medium, summaries auto)
のように表示されます。
この reasoning は、モデルにどの程度の推論をさせるかを指定する設定です。
GPT-5.6では、
none
low
medium
high
xhigh
max
を利用できます。OpenAIは medium をバランスの取れた出発点、low を速度重視、high / xhigh を追加推論によって品質向上が確認できる仕事、max を最も難しい品質優先の仕事向けと説明しています。
つまり、
low
↓
medium
↓
high
↓
xhigh
↓
max
深く考える
処理時間が長くなる
消費量も増える可能性が高い
という関係です。
Terra mediumとSol lowではどちらが安いのか
ここは非常に興味深いところです。
例えば、
Sol + reasoning low
と
Terra + reasoning medium
を比較します。
Reasoningをmediumにすると、lowより多くの推論トークンを使う可能性があります。
しかし、Terra自体の単価はSolの40%です。
そのため、TerraがSolより多少長く考えたとしても、通常はTerra mediumの方が効率的になる可能性があります。
例えば仮に、
Sol low
10,000 output tokens
Terra medium
15,000 output tokens
だったとすると、出力料金換算では、
Sol
10,000 × $30 / 1,000,000
= $0.30
Terra
15,000 × $12 / 1,000,000
= $0.18
となります。
Terraが50%多くトークンを使っても、まだ安いわけです。
理論上は、TerraがSolの2.5倍以上のトークンを使用して初めて、モデル単価差が相殺されます。
ただし、OpenAIは low → medium → high の具体的な固定倍率を公表していません。
したがって、
Terra mediumはSol lowの○%の消費量
と正確に断定することはできません。
Summariesとは何か
もう一つの、
summaries auto
はReasoningとは別の設定です。
Reasoningが、
どの程度考えるか
なのに対して、Summariesは、
そのReasoningについて、どの程度の要約を生成・表示するか
という設定です。
代表的には、
auto
concise
detailed
none
などがあります。
利用量を節約するという観点では、SummariesよりもモデルとReasoningの選択の方がはるかに重要です。
感覚的には、
モデル選択
↓
Reasoning
↓
↓
Summaries
くらいの優先順位で考えてよいでしょう。
普段使いはTerra mediumがよさそう
以上を考えると、日常的なプログラミングでは、
GPT-5.6 Terra
reasoning medium
summaries auto
を標準にするのが、性能と利用量のバランスがよさそうです。
OpenAI自身もTerraを「intelligence and cost」のバランスを取ったモデルとして位置付けています。
作業内容によって、例えば次のように切り替えます。
| 作業 | 推奨設定 |
|---|---|
| 単純なコード修正 | Terra + low |
| 通常の実装 | Terra + medium |
| テスト作成 | Terra + medium |
| リファクタリング | Terra + medium |
| 複雑なバグ調査 | Terra + high |
| 難しい設計判断 | Terra + high |
| Terraで解決できない問題 | Sol + low / medium |
| 非常に難しい問題 | Sol + high以上 |
| 大量の定型処理 | Luna + low / medium |
いきなりSolへ切り替えるのではなく、
Terra medium
↓
難しければ
↓
Terra high
↓
それでも難しければ
↓
Sol
という順番にするのが効率的です。
コードレビューはChatGPTに分離する
もう一つ考えられるのが、Codexにすべてをやらせない方法です。
Codexは、
コードを読む
↓
修正する
↓
テストする
↓
再修正する
といったエージェント型の作業が得意です。
一方、コードレビューは必ずしもCodexで行う必要はありません。
そこで、
【実装】
Codex
Terra medium
↓
【GitHub】
push
↓
【レビュー】
ChatGPT + GitHub
↓
【修正】
Codex
Terra medium
という役割分担にします。
これには利用量節約以外にもメリットがあります。
実装したCodex自身にレビューさせるのではなく、ChatGPTにレビューさせることで、実装者とレビュアーの視点を分離できます。
レポジトリ全体レビューはChatGPT Workを使う
さらに、
レポジトリ全体を調査して、Critical / Major / Minorに分類して問題点を報告する
といった大規模レビューは、ChatGPT WorkとGitHubを接続して行う方法があります。
こうすると役割を、
Codex
=実装担当
ChatGPT
=レビュー担当
ChatGPT Work
=大規模調査・横断レビュー担当
と明確にできます。
ただし、CodexからWorkに処理を移せば利用制限が完全になくなる、という意味ではありません。
重要なのは、それぞれ得意な仕事に使い分けることです。
複数PCでCodexを使う場合
複数のPCから同じCodexアカウントを使用する場合にも注意が必要です。
モデルやReasoningなどのCodex CLI設定は基本的に各PCの、
~/.codex/config.toml
で管理します。
そのため、
PC-A
Terra medium
PC-B
Sol low
PC-C
Terra high
という状態もあり得ます。
1台でモデルを変更したからといって、別PCのローカル設定まで自動的に同じになるわけではありません。
一方、Plus契約のCodex利用量はアカウント側の制限なので、複数PCを使えば利用枠がPC台数分に増えるわけではありません。
プロジェクトごとにCodex設定を統一する
複数PCで同じGitHubリポジトリを開発している場合は、Codexの設定をプロジェクト側で管理する方法も便利です。
例えば、
project/
├── .codex/
│ └── config.toml
├── AGENTS.md
├── src/
└── ...
という構成にします。
標準設定を、
model = "gpt-5.6-terra"
model_reasoning_effort = "medium"
model_reasoning_summary = "auto"
としてGit管理しておけば、複数PCで開発するときにも設定を揃えやすくなります。
AGENTS.md には開発ルール、.codex/config.toml にはCodexの動作設定、というように役割を分けると管理しやすくなります。
結論:最高性能モデルを常用する必要はない
Codexを使い始めると、
高性能なモデルを使った方がよいのでは?
と考えがちです。
しかし実際には、通常の実装まで常にSolを使う必要はありません。
現在のGPT-5.6では、
Sol
=難しい仕事
Terra
=普段の仕事
Luna
=大量・単純な仕事
と考えると分かりやすいでしょう。OpenAIの公式モデルガイドも、Solを複雑な推論・コーディング、Terraを性能とコストのバランス、Lunaを効率的な大量処理向けとしています。
私が実際に運用するなら、基本設定は、
Codex
GPT-5.6 Terra
Reasoning medium
Summaries auto
にします。
そして、
通常実装
→ Terra medium
単純作業
→ Terra low / Luna
難しい問題
→ Terra high
それでも解決しない
→ Sol
コードレビュー
→ ChatGPT
レポジトリ全体レビュー
→ ChatGPT Work + GitHub
という役割分担にします。
これならCodexのWeekly limitを無駄に消費しにくくなり、同時にSolの高い推論能力を本当に必要な場面に残しておくことができます。
AIコーディングツールも「一番強いモデルを常に使う」のではなく、作業内容に応じてモデルとReasoningを使い分ける時代になってきたと言えそうです。

